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「寝冷えして風邪をひいた」 「寒いホームで電車が遅れて長時間立たされたのが原因で風邪をひいた」 と受診する患者さんが多くいます。 医師にとっては、「風邪の原因はウイルス」が常識です。 「寒い所に立たされて体が冷えたからといって風邪になるわけはない。 それは都市伝説では?」と思っていたら、意外な論文があることが 分かりました。 平成17年に報告されたもので、年に2回くらい風邪をひくという18歳以上の健康な180人(平均年齢20歳)を対象に行った研究です。 対象者を、10度の水が入った約10リットルの容器にはだしで20分間足をつけて体を冷やすグループと、靴下と靴をはいたまま空の容器に足を入れる冷やさないグループに分け、4~5日間の風邪の症状について2つのグループで差があるかを比べました。 具体的には、鼻水▽鼻づまり▽喉(のど)の痛み▽せき-の4症状を毎日4段階で点数化して評価しました。まったく症状がないと0点、4症状とも最もひどいレベルは12点です。 結果は、冷やしたグループは合計が平均5・16点、冷やさないグループは同2・89点と、2点以上の差があり、冷やしたグループで風邪の症状が多いといえます。詳しく見ると、実験直後は2つのグループに差がなく、1日目で少し差がつき、4~5日目でさらに差が大きくなっています。 実験直後に差がなく、4~5日たって差が出てくるという結果は、風邪発症のメカニズムからは案外妥当なものかもしれません。 寒さそのものが症状の原因なら、実験直後から差が出るといえます。実際は4~5日後に差が出たわけですから、寒さそのものよりも、寒さが引き金で風邪のウイルスが増殖し、少し時間がたったところで症状が出たと考えるのが合理的です。 実は人間の体には、風邪の原因となるウイルスが常に取り込まれています。 つまり、人間の体は日々風邪のウイルスと闘っているわけです。 風邪の症状が出るかどうかには、「気温や湿度などの環境」「ウイルス自体の病原性や量」「本人の免疫力」などが関係します。ウイルスが体に入れば必ず風邪になるというものではありません。 風邪をひくための重要な因子は、ウイルスそのものではなく、 本人の免疫力にかかわる因子なのかもしれません。 「体を冷やすのが風邪をひきやすくする」というのは、 都市伝説ではなくて、科学的な事実としても示されているのです。 武蔵国分寺公園クリニック院長・名郷直樹
by comeonin_57
| 2015-05-01 01:43
| かぜ
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